2019年12月21日土曜日

標準報酬月額と算定基礎届

このエントリは Fintalk Advent Calendar の20日目です。


給与の額面から手取りを計算してみよう。」の中で、健康保険料や年金保険料を計算するベースとなる金額が標準報酬月額だという話をしました。

この標準報酬月額が決まるタイミングは主に3つあります。
  • (1)資格取得時の決定
  • (2)定時決定
  • (3)随時改定

標準報酬月額が決まるタイミング

「(1)資格取得時の決定」というのは要は就職したタイミングでの決定ということです。事業主は従業員を雇用したときに報酬月額を届け出ます。これに基づいて標準報酬月額が決まります。
資格取得時に決まった標準報酬月額は

1月1日から5月31日までに資格取得した人 → その年の8月まで
6月1日から12月31日までに資格取得した人 → 翌年の8月まで

使用します。


毎年7月1日〜7月10日の間に事業主は算定基礎届というのを届け出る必要があります。この算定基礎届で標準報酬月額が決まるのが「(2)定時決定」です。
定時決定(算定基礎届)で決まった標準報酬月額は

その年の9月から翌年の8月まで

使用します。


昇給や降給によって報酬月額が大幅に変動したときは、毎年1回行う定時決定を待たずに標準報酬月額を見直します。 この見直しによる決定が「(3)随時改定」です。
随時改定で決まった標準報酬月額は

1月から6月に改定された場合 → その年の8月まで
7月以降に改定された場合 → 翌年の8月まで

使用します。

随時改定が必要な変動には条件があります。詳しくは「日本年金機構の 月額変更届の提出」に書かれています。

算定基礎届

算定基礎届は7月に提出します。
算定基礎届には直前の4月,5月,6月に実際に支払われた報酬を書きます。

例えば「給与が末締め翌月5日払い」の場合、3月の給与が4月に、4月の給与が5月に、5月の給与が6月に支払われます。
算定基礎届には実際に支払われた報酬を書くので、この場合3月,4月,5月の給与として4月,5月,6月に支払った額を書きます。

算定基礎届には、報酬を計算する基礎となる日数である支払基礎日数も書きます。
例えば月給制で「給与が末締め翌月5日払い」の場合、4月の報酬は3月の給与分なので4月の支払基礎日数には31日(3月の日数)を書きます。

4月,5月,6月の報酬月額のうち、支払基礎日数が17日以上ある月の額で平均を計算します。
例えば4月,5月,6月の支払基礎日数が17日以上あるなら (4月分+5月分+6月分)/3 になりますし、4月と6月だけ支払基礎日数が17日以上あるなら (4月分+6月分)/2 になります。



報酬となるもの・ならないもの

標準報酬月額の算定のもととなるものを報酬と呼んでいます。
基本給のほか、住宅手当てや残業手当てなどの諸手当、現物で支給される食事や住宅、通勤定期券も報酬に含まれます。

例えば3月,4月,5月分の基本給が30万円で、住宅手当2万円、3ヶ月定期が3万円だとすると、
報酬月額の項目の「通貨によるものの額」として32万円(30万円 + 2万円)、「現物によるものの額」として1万円(3万円/3)を書きます。

食事が支給される場合

事業主が被保険者に社員食堂などで食事を支給した場合、「現物給与の価額」で通貨に換算して報酬に算入します。 「現物給与の価額」は都道府県ごとに厚生労働大臣が定めます。

日本年金機構の 全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)ページ
平成31年4月~(PDF) があります。

これを見ると、例えば「東京の1人1日当たりの昼食のみの額」は 250円です。
昼食を20日分支給した場合 250 * 20 = 5000円になりますが、被保険者の負担額が「現物給与の価額」の 2/3(この場合3334円)以上の場合は報酬に算入しません。
被保険者の負担額が「現物給与の価額」の 2/3 未満の場合は、「現物給与の価額」から負担額を引いた額を報酬に算入します。
例えば被保険者の負担額が 2000円なら 5000 - 2000 = 3000円を報酬月額の項目の「現物によるものの額」に追加します。

住宅が提供される場合

事業主が被保険者に社宅や寮を提供している場合、「現物給与の価額」で通貨に換算して報酬に算入します。 「現物給与の価額」は都道府県ごとに厚生労働大臣が定めます。

日本年金機構の 全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)ページ
平成31年4月~(PDF) があります。

これを見ると、例えば「東京の1人1カ月当たりの住宅の利益の額(畳1畳につき)」は 2590円です。
例えば、寮の居住用の室が10畳の場合(玄関や台所やトイレなど居住用以外の室は含めない) 2590 * 10 = 25900円になりますが、被保険者の負担額が「現物給与の価額」以上の場合は報酬に算入しません。
被保険者の負担額が「現物給与の価額」未満の場合は、「現物給与の価額」から負担額を引いた額を報酬に算入します。
例えば被保険者の負担額が 10000円なら 25900 - 10000 = 15900円を報酬月額の項目の「現物によるものの額」に追加します。

賞与

賞与の扱いは、支給回数が4回以上か未満かで変わってきます。

賞与が年4回以上支給される → 報酬の対象になる
賞与が年3回まで支給される → 報酬の対象にならない(標準賞与額の対象になる)

7月1日を基準として前1年間に4回以上賞与が支給されていた場合、賞与の合計額を12で割った額を報酬月額の項目の「通貨によるものの額」に追加します。

ガイドブック

標準報酬月額を決めるもとになる報酬に何が含まれるのかをざっくり解説しました。
実際は他にもっと細かいルールがあります。例えば、月の途中で入社したときはどうなるのかとか、パートタイム労働者や短時間労働者の場合はどうなるのかなど。

以下のガイドブックにさまざまなケースでの例が紹介されているので、気になったかたは是非読んでみてください。

日本年金機構 算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和元年度)(PDF)


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