前回「給与の額面から手取りを計算してみよう。」で給与から引かれる社会保険料や税金がどう計算されているのか解説しました。
今回は賞与について同じように計算してみたいと思います。
前回説明した用語をそのまま使いますので、前回を読んでいない方はまずそちらを読んでください。
設定
実際に計算していくにあたり、以下の設定で進めていきます。IT企業に務めるサラリーマン、28歳、独身、IT健保加入
2019年4月以降毎月「基本給30万円」、残業なし、交通費1万円、住宅手当2万円
夏の賞与60万円
賞与の額面
賞与には交通費や手当てなどはつかないので「額面60万円」です。前回、給与から引かれる健康保険料や年金保険料を計算するベースとなる金額は標準報酬月額だと説明しました。
一方賞与の場合は「標準賞与額」で計算します。
標準賞与額
標準賞与額とは、(年3回以下)支払われる賞与について1000円未満を切り捨てた額をいいます。標準賞与額には以下の上限があります。
健康保険 : 年度(保険者単位で4月1日から翌年3月31日まで)の累計額で 573万円
厚生年金保険 : 支給1ヶ月(同一月内についき2回以上支給されたときは合算)150万円
この人の場合の標準賞与額は60万円です。
健康保険料、介護保険料
では賞与の保険料を計算しましょう。前回と同じでIT健保の計算式を使います。被保険者負担率は 1000分の42.5 なので天引きする健康保険料は25,500円です。
健康保険料 = 標準賞与額 * 42.5 / 1000 = 600,000 * 42.5 / 1000 = 25,500
介護保険料も同じように計算すればよいのですが、介護保険料を払うのは40歳からなので、この方は介護保険料負担は0円です。
厚生年金保険料
平成29年9月以降の厚生年金保険料率は18.3%です(ただし厚生年金基金に加入している場合免除保険料率が引かれる)。被保険者の負担は9.15%なので天引きする年金保険料は54,900円です。高いね...
厚生年金保険料 = 標準賞与額 * 9.15 / 100 = 600,000 * 9.15 / 100 = 54,900
雇用保険料
雇用保険料率はこちらのページの 平成31年度の雇用保険料率について(pdf)です。一般の事業の労働者負担は 3/1,000 です。天引きする雇用保険料は1,800円です。
雇用保険料 = 標準賞与額 * 3 / 1000 = 600,000 * 3 / 1000 = 1,800
源泉徴収税(所得税+復興特別所得税)
賞与の源泉徴収税を計算するには、前月中の給与等から社会保険料等を引いた額(つまり、前月の給与計算のときの課税対象額)を使います。前回の値を使うとすると、この方の前月の給与の課税対象額は283,450円です。
源泉徴収税額表は国税庁のこちらのページの源泉徴収税額表関係のところにあります。
平成31年(2019年)分 源泉徴収税額表の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(pdf)
この方は扶養がいないので、課税対象額 283,450円 に対応する扶養親族等の数が0人のところをみると、6.126% です。
この率を賞与の課税対象額にかけたものが源泉徴収税額になります。
まず、賞与の課税対象額は517,800円です。
課税対象額 = 賞与額面 - 各種社会保険料 = 600,000 - 25,500(健康保険料) - 0(介護保険料) - 54,900(年金保険料) - 1,800(雇用保険料) = 517,800
これに 6.126% をかけて源泉徴収税額は 31,720円です。
源泉徴収税額 = 517,800 * 6.126 / 100 = 31,720(10円未満四捨五入)
まとめ
さて、「賞与額面60万円」の手取りはいくらになったのか!600,000 - 25,500(健康保険料) - 0(介護保険料) - 54,900(年金保険料) - 1,800(雇用保険料) - 31,720(源泉徴収税額)= 486,080円
手取りは 486,080円 です!
600,000 - 486,080 = 113,920
10万円以上引かれてますねー...
113,920 / 600,000 * 100 = 18.99 %
住民税がないのに額面の2割近いですね...
賞与に対する源泉徴収税額の算出率は前月の給与の課税対象額で決まるので、給与が増えて率が次の段階になると源泉徴収税額ががっと増えます。つらい!!!
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